Concert Report by Maki-san
MSG at Alpenrock-House, Kloten, Switzerland
November 5, 2004

Added on 11/17/2004


遅くなって申し訳ありませんが、11月5日のスイスチューリッヒ、クローテン空港におけるMSGコンサートのレビューです。

今回のツアーでオープニングを勤めているピュアインクはスイス出身のバンド。彼らにとって4日と5日のスイス公演はまさに「故郷に錦を飾る」といった内容で、アルペンロックハウスが会場した時、既にファンと家族、友達がつめかけ、ステージ横で派手な会食会が始まっていました。とてもハードロックやヘビーメタルの会場に現れる風ではない一般の人たち(おじさん、おばさん、ティーンエイジャー)が多かったので、MSGやUFOのファンは面食らってしまったという感じ。 それでも会場が満員というのは良いもので、ピュアインクが充分に盛り上げた後、MSGが登場した午後9時50分には驚く程の熱気が会場を包んでいました。ビルボードには「観客数400」と表示されており、実際フロアには少なくとも300人はいたと思われます。

日本と違い、マイケルファンのほとんどはUFOのファン。 頭の禿げたおじさんや、お腹の出たおばさんたちも沢山いて、ファンの年齢層の高さにはビックリ。そういう人たちがボンバージャケットで詰め掛けているのはなかなかの迫力です。まあ、スコーピオンズのコンサートに子連れで来ている人も沢山いましたし、何時までもロックファンでいる事が許されるのがヨーロッパ的良さなのかもしれません。

他のレポーター達も必ず書いていましたが、ディーンのVはチューニングに問題があるようです。この日はローディーが間違えてサブのギターをチューニングしてマイケルに渡してしまった様子で、弦に触ってすぐに首をかしげ、ローディーをステージに呼び付けました。ネック裏を指差して、これは違うというそぶりをみせ、ステージに立てて合った2本めのVと交換。 まぬけにもローディーは2本目を全くチューンしてなかったので、3分近く舞台上でマイケル本人がチューニングするというハプニングがおきました。 いくら2本まったく同じデザインのVを使っているとはいえ、このローディーは無能なんではないでしょうか?マイケルの準備が整うまで、オープニングのバックミュージックはかかりっぱなし。他のメンバーはやるせない様子でしたが、辛抱強く待ってリーダーへの忠誠を見せていました。

マイケルのプレイはクリアで乱れが無く、舞台向って左端の自分のポジションからほとんど動かずに全神経を演奏そのものに集中していました。一瞬「本当に弾いているのか?」と思えるほど、指には無駄な力が入っておらず、滑らかな動きと完璧さはまるでクラシックギタリストの様。6曲目にマイケルが「ライツアウト」のイントロを弾きだしたところで(UFOの曲しか知らない人が多い)観客の興奮はピークに達して、大きな歓声があがりました。マイケルも調子にのってきたようで、サングラスを取って前進し、サビを口ずさむ程の機嫌の良さ。私が手を振るとウインクして返してくれる程のサービスで、とても病み上がりとは思えない様子でした。やはりチューニングとモニターのコンディションはまめにチェックしており、このあたりから自分のサウンドに満足して演奏を楽しみ始めたのではないかという印象です。

残念な事にこの日のミキサーの調子はもう一つで、特にボーカルは聞こえ辛く、クリスの熱唱が聞こえない事も度々ありました。 クリス本人はイヤーピースをはめていたのでそれには気付いていなかったらしく、観客の熱狂に喜んで本人も興奮気味に「今回のツアーで最も盛りあがっているよ!」と嬉しそうに叫んでいました。おそらくマイケルが流感にかかって以来、これが全曲を演奏した最初のコンサートだったと思います。

Revはとにかく舞台中を飛んで走り回り、おそろしいスピードでベースを弾きまくていました。そり上げた刺青だらけの頭のてっぺんに数本の三つ編みをまとめて、それをリズムにあわせて獅子舞のごとくグルグルまわしてみたり、上半身裸になって刺青を見せびらかしたりと、完全に観客の注目を自分に集めていました。(静かに完璧に弾いていたマイケルとは対照的)特に「Into the Arena 」のソロは圧巻。

ウェインは始終ニコニコと大黒様の様な表情で、舞台に良い雰囲気をよんでいました。ただ一度だけ、彼が ' Doctor Doctor ' のイントロにキーボードソロを弾いている際、ミキサーがボリュームを上げたり下げたりしたのにはさすがに腹を立てたようで、人差し指を立てて降りながらむくれた表情を見せました。全くひどいものだと観客もブーイング。ピュアインクの演奏中も含めて、演奏そのものは完璧に近いのに、ミキサーがそれを台無しにしてくれたのには困ったものです。

この日はアンコールも予定通り行われました。まず 「 Armed and Ready 」 から「 Doctor Doctor 」と続け、一度観客の手を順にマイケルがハイファイブで叩いて挨拶して下がり、止まない歓声に答えて更に 「 Rock Bottom 」の演奏。ソロパートに入ったところでマイケルは目をつむり、夢を見ているような表情で驚くようなフリーソロを弾き始めました。私は今までに聞いた事がないすばらし変則メロディーだったので、驚いてかぶりつきで運指をながめていました。コンサートの最後にはもう一度観客と握手して深く頭を下げ、笑顔のうちにバックステージへ。

演奏後にサイン会があると聞いていたので、急いでホールに順番とりに出かけて行ってびっくり!既にマイケルが座ってサインを始めているではありませんか!以前は「体力消耗を防ぐ為に、会場でCDを買ってくれた人にしかサインしない」とインタビューに答えていましたが、チケットであろうがUFOのLPであろうが、誰にも親切にサイン。欲張りにも自分のレコードコレクションを全部持ち込んだ人もいましたが、マイケルは全部にサインしては、古いレアもののLPにチェックを入れては笑ったり、「ほー、こいつは、、」などと独り言を言って楽しんでいる様子でした。私もサインをもらってから一緒に写真を取らせてもらいました。病み上がりでお鼻が赤いのがかわいらしく、今まで「神」のように崇めていた人とこんな近くで会えるとは!と大感動。ステージ上ではストイックに音楽への愛情と情熱を追いかけている姿が印象的でしたが、オフステージで始めて彼の穏やかで親切で自信に満ちた人間性を垣間見たという思いでした。

スイス、チューリッヒ在住、 クンツ 小林 真紀 より


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