Down To Earth/Rainbow (1979)

レインボーのスタジオアルバム3作目にあたるこのアルバムは、発売当時「冒険的」あるいは「意欲的」な作品と評された。過去の2作においては、クラシカル色が強い曲作りに重点が置かれていたが、おそらくアメリカのマーケットを意識してかポップ的要素も盛り込まれたのが本アルバムである(「Since You Been Gone」が最も顕著な例であり、この曲においてリッチー・ブラックモア先生は過去にはなかったポップ的なフレーズを決めている)。しかし、私にとってもっと重要なことは、親愛なるボーカリストであるグラハム・ボネットの加入である。このアルバム以降グラハムはハードロックの世界へと突入していったわけであるが、この意味からも彼にとって記念碑的なアルバムである。またこのアルバムは、グラハムに当時レインボーのドラマーであったコージー・パウエルとの重要な出会いの機会を与えることとなった。二人は生涯の友人として今でも付き合いが続いている(はず)。互いに頑固者に「超」が付くグラハムとリッチーの関係が長続きするわけがなく、このアルバムがグラハムが参加した唯一のレインボーのアルバムとなってしまった。事実、グラハムがレインボーを去った後も、彼は多くのコンサートや自身のソロアルバムやアルカトラスおよびインペリテリ等のプロジェクトにおいてこのアルバムに収録されている曲を幾度となく演奏してきた。このことはいかに彼がこのアルバムを気に入っているかを示している。このアルバムにおけるリッチーのギタープレイもクールかつ意欲的である。師匠はこのアルバム以降ボトルネックプレーを多用するようになった。「Lost In Hollywood」における師匠のソロは溜め息もの。



ニューヨーク52番街/Billy Joel (1978)

グラミーの最優秀アルバム賞も受賞したこのアルバムを嫌いな人はいないであろう。個人的には、このアルバムが出た頃のビリー・ジョエルは長い彼の音楽人生の中でも絶頂期にあったと思う。このアルバム以降、彼は大きく転向し、それも私が望んでいない方向へと進むことになった(次のアルバムである「グラスハウス」は悪くはなかったが、その後のアルバムにはついて行けないところがある)。彼はビッグになりすぎ、純粋に音楽に根差していたピアノマンが単なる大金持のエンターテナーに変貌した感がある(現在のファンからはお叱りを受けるかもしれないが)。現在の彼はかつて「I'm the entertainer」と歌っていた彼ではなく、最近の彼の音楽に魅了されることもなくなってしまった(彼の進歩について行けない私が悪いのかもしれないが)。このニューヨーク52番街には彼の当時の音楽に対する真摯な態度(そして恐らく彼の真摯な生き方)が反映されている。彼のアルバムの中でも最もジャス色の濃いこのアルバムは、技術的にも卓越したジャズ系ミュージシャンが参加して録音された。普通のロックミュージシャンが使わないテンションコードがこのアルバムでは多用されているが、これはビリー・ジョエルの多彩で奥深い音楽性を実証している。このアルバムのすごいところは、そうしたジャズ的要素が多いにもかかわらず、楽曲自体は非常に聴きやすいものになっているところである。いずれにしても、彼が当時最高と評された「ストレンジャー」を超えるアルバムをそれも全く異なるアプローチから作り上げたということはまさに驚くべきことである。



白いレガッタ/The Police (1979)

ポリスの第2作であるこのアルバムが発表になるまでは、ポリスについてはその名前しか知らなかった(第1作に収録の名曲「ロクサーヌ」すら聴いたことがなかった)。その当時、ポリスはニューウェーブの旗頭と音楽雑誌で紹介されたが、私はニューウェーブ音楽とは当時大嫌いだったパンクミュージックの一種だと思っていた。しかし、このアルバムに収録されている「孤独のメッセージ(Message In A Bottle)」がラジオで流れているのを聴いたのがきっかけとなり、私はその誤った認識を改め、このアルバム全体を聴くことによってかれらの偉大さを十分理解するに至った。彼らの音楽はパンクとは似ても似付かぬ洗練されたグルーブ感を持つものであった。一般的には、スティングにばかり関心が集まっているが(そして確かに彼は素晴らしいシンガーであることは認めるが)、他のメンバーであるスチュワート・コープランドとアンディ・サマーズもポリスの音楽において重要な役割を果たしており、この意味ではスティングに決して劣るものではない。コープランドは恐るべきハイテクドラマーであり、彼独特の固めのトーンとオブリガートプレーは最高にかっこいい。一方、サマーズはハイテクとは全く縁の無い世界に生きているギタリストであるが、彼の一見音を外しているかにも聞こえるほどアバンギャルドな音使いや、効果的な空間系エフェクトの使用は非常にインパクトがある。